「仕込み」とは何か

・様々な意見が出てくる議論の場に臨むうえで、ファシリテーターは、何をどのように準備すればよいのだろう?
・ファシリテーターが議論の内容に入り込みすぎると、意見の押し付けや強引な進め方になってしまわないだろうか?

議論を適切にファシリテートするためには、そのための準備が不可欠です。
一見、事前の準備をしていないように見えてもじつは、数多くの議論の場に立ち会った経験が「仕込み」になっていて、どのように議論を組み立て、進めるかを常日頃から深く考え、理解しているからできる方もいます。

仕込みをすることは、必ずしも当初思い描いたシナリオどおりに強引に議論を進めることではありません。むしろ参加者の状況や意見の出方に臨機応変に対応するために必要です。

「仕込み」とは、「自分の考えている結論に向けて仕込む」のではありません。「結論に向けて」ではなく、「その場で議論をする目的を達成するために、考え、議論すべきこと」を考え、そこに参加者の思考を誘導するのです。
結果として、自分自身が考えていたものとは異なる結論に到達することもあります。むしろ参加者から新しい情報や優れた意見が出されることで、自分が当初描いていた結論よりも優れた結論、皆が納得できる結論に至ることができれば、まさに集団で考えるメリットがある、と捉えるべきです。

議論は最終的に何のためにおこなわれるのでしょうか?
それは、いろいろ議論した結果、なんらかのアクションをとることが意思決定され、その意思決定に沿って誰かが行動するためです。
そして、その行動が価値を生み出すのです。つまりビジネスにおける議論の最終目的は、こうした「行動の決定」です。

例えば、優れたリーダが意思決定を行い、その決定内容をたの人に伝えて実効させることでもよいはず、にもかかわらず、わざわざ議論をするのには、それに見合った効果が期待されます。ではその期待効果とは何でしょうか?

1つは、多くの人が各自の専門性に基づいた知恵や情報を持ち寄り、様々な考え方をぶつけることで優れたアイディアを生み出し、議論することで「決定の合理性を高める」ことが期待されます。
もう1つは、関係メンバーが、議論に参加し、決定に関与することで「決定プロセスの納得性を高める」ことが期待されます。

議論を適切にリードするためには、ファシリテーターが事前にどのように議論を進めるべきか、十分に検討し準備しておくことが必要です。
これが「議論の仕込み」です。では、具体的にはどうすればいいのでしょうか?
「仕込み」で行うことは、以下の3つです。

・議論の「出発点」と「到達点」を明確にする
・参加者の状況を把握する
・議論すべき論点を広く洗い出し、絞り、深める
となります。

出典:ファシリテーションの教科書 グロービス 東洋経済新報社


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