「ファシリテーターは自分の中で起こっている感じや感情に敏感になろう」

メタスキルに関して大事な二つ目は、「ファシリテーターは自分の中で起こっている感じや感情に敏感になろう」ということだ。

私たちは、ファシリテーターとして人前に立ったとき、参加者の中でどんな反応が起こってきているのか必死で感じ取ろうとする。目や意識は自分の外に向かって集中している。だが一方で、自分の中で緊張やあせり、違和感や疲れなど様々な感じが起きてきても、あまり注意を払っていないのではないでしょうか。また、怒りや悲しさ、もううんざりだなど、様々な感情が沸き起こってきても、極力抑えてしまい無視しようとしてはいないだろうか。 しかし、ファシリテーターの私も場の一部である。場の中にいる私は場全体と無関係に存在することはできない。従って場を構成している一部である私の中で起こっていることは、その場からの貴重なフィードバックと考えることもできる。「人の話を心も身体も傾けるように丁寧に聴きましょう!」と傾聴を促すファシリテーターが、自分の中の声きちんと聴いていないのは、おかしいし残念なことではないだろうか。

ある参加者の話に丁寧に耳を傾けることで、様々な発見や気づきがあり、場全体への貴重なフィードバックや示唆になるのと同じように、ファシリテーターも自らの内側で起こっている感じや感情にもっと敏感になってみよう。そうすることで、全体に役立つ貴重な情報を得られるのだ。
「あっ、あの発言にムッときてるな」とか「もうその話はうんざりだよ」とか、「ここで時間がまた延びるとつらいよな」など、自分の中で起こっている気持ちを、まずそのまま意識してあげること。否定も肯定もせず、ただそのまま気づいてみる。その上で、まわりを見回して、例えばうんざりしている人が多いいようなら、全体の進行を司るファシリテーターとして、たとえば、「少しお話が堂々巡りしているように感じますが、どうでしょう、こういう視点で少し話を進めませんか」などと口にして、適切な介入や提案が出来ます。

出典:ファシリテーションー実践から学ぶスキルと心 岩波書店 中野民夫、他


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