「腹落ち」を生み出すファシリテーション

ファシリテーションは、単なる会議進行の技法ではなく、リーダーの必須スキルです。

そしてファシリテーター型リーダーの必要性はますます高まって来ています。

企業内で行われる新しい事業構造への転換などにより新しいビジョンが打ち出され、

業務プロセスを革新し、それに合わせて組織形態や人事制度も変更される。

そして、職制を通じて、方向転換の必要性や主旨を時間をかけて説明されます。

しかし、実際に変革プランがスタートすると、組織のあちこちから不協和音が聞こえます。

特に多いのが、「総論賛成、各論反対」。大きな方向性については、メンバーは良く理解し

同意もしています。しかし、いざ自分の業務に関する話になると、「そうはいっても・・・」と

なかなか前に進まない。

 

この場合、何が足りなかったのでしょうか?

実はとても当たり前の話ですが、組織メンバーに変革に対する「腹落ち刊」が作られてなかったと言うことに尽きるのです。

確かに全体の戦略の方向性は、何度も説明されていて、組織メンバーは知ってはいました

しかし、方向性の変化によって、自分の仕事の何がどの様に変わるのか、自らの頭で考え、イメージを持ち、そこにコミット出来ていたわけではありません。その結果、これまでとは異なる目的、役割、仕事の仕方が求められる状況に対し、さまざまな反発や迷いが生じてしまったのです。

この様に、「戦略も変え、組織も変えた。でも、人は動かない。どうしたら組織全体を目指す方向に素早く動かし、戦略をやりきることが出来るのか?」これが多くの企業が解決すべき課題です。その最も重要かつ難しい事は、以下にスピーディーに、かつ多くの人に、しっかり「腹落ち感」を持ってもらうのかと言うことです。

「腹落ち」とは、「目的と理由」を深く理解し、「具体的なあるべき姿」を自ら描き、「ワクワク感や当事者意識」を持てるレベルまで納得すると言うことです。

「腹落ち感」をつくるうえで肝になるのが、リーダーのコミュニケーションの在り方です。大きな方針をそのままメンバーに与えただけでは、自分のものになりっません。一方で、事細かに指示を出してもメンバーは、「わかりました」と言うでしょうが、決して「腹落ち」には至りません。

「腹落ち」するためには、大きな方針を自らが細分化し、自分の業務のレベルに落とし込み、自分の問題とさせる。そして自分の業務に照らし合わせて、何をどの程度どうするべきか、具体的な判断軸を自ら考えさせる。こうしたプロセスを踏むことで、メンバーが自分で自分を納得させることが、必要です。

このように、メンバー個人だけでなく、チームや関係者と言う集団に対して、それぞれが持っている様々な意見を適切に整理し、メンバーが考えるべきことを考え続けられるようにサポートする、そして納得、合意のプロセスを演出する。ファシリテーションとは、メンバーの「腹落ち」をつくる為に核となるコミュニケーションの営みなのです。

深い「腹落ち」は、メンバーのやる気を高め、行動を強く促します。自ら考え、判断できる人材の層が厚くなることは、継続的な業務の改善・効率性の向上を生むばかりでなく、さまざまな状況の変化や困難に対する組織としての対応力・柔軟性・俊敏さを高めます。

組織力を高めることができるリーダーが、強く求められています。そしてファシリテーションは、そのための強い武器になり得るのです。

出典:ファシリテーションの教科書 グロービス 東洋経済新報社


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