ファシリテーターは、時と場所に応じて、全く違うアプローチを使い分けよう

メタスキルに関して大事な三つ目は、「ファシリテーターは、時と場所に応じて、全く違うアプローチを使い分けよう」ということです。

例えば、「魚釣り」のメタスキルというのがある。釣り人は、まず釣り糸を垂れてのんびり待つ時は、ある程度の注意は払いつつもリラックスして待つ。何か釣り糸に引きを感じれば、すぐさまそれが魚がかかったかどうか少し糸を引いて確認する。そして、確かなら一気に糸を引いて、魚を捕えにかかる。のんびりしながら注意を払う事、精確な気づきを持って一気に俊敏に動く事を組み合わせること。

ファシリテーションの現場でも、最初は考え抜いてきた「問い」を投げかけても、場があまり反応しない事は多い。そこは待つしかない。あせってもしょうがないのだ。待ってスペースを作る。そこに、誰かが何かを話し始める。
引きのあった釣り糸を確かめるように、発言の真意を確認したり、うなずいたり、復唱したりして様子を見る。次第に場が暖まって様々な発言が飛び交う。そして、相互作用の中で、話がどんどん広がる。ついには混沌としてしまうかもしれないが、そんな中で「これだ!」と思える発言が飛び出し、皆がどっとどよめく。すかさずそれを逃さぬように拾う。たとえば「皆さんがどっと反応しましたね。ここに何かヒントがありますか?」と焦点を当てる。
「魚釣り」のメタスキルはこのように、待つ事と俊敏に動くことの両極端なアプローチを使いこなす。

私たちファシリテーターとしてワンパターンの対応に終始することなく、そしてまた様々な状況の表面的な現象にとらわれ過ぎず、その奥にうごめいているものを注意深く察知しながら、手を替え品を替え流れるように対応したいものだ。

出典:ファシリテーションー実践から学ぶスキルと心 岩波書店 中野民夫、他


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